COLUMN コラム

コラム Vol.7

楽しくて深いアニメーションの世界へようこそ!

令和6年11月10日、香川県高松市にある情報通信交流館e-とぴあ・かがわで令和6年度さぬき映画祭「映画ゼミナール」が開かれました。

この催しはさぬき映画祭の事業のひとつで、映画を見ることにもっと興味をもってもらおうと、令和3年から行われているものです。

今回はリクエストが多かった「アニメーション」のジャンルにおいて、普段なかなか聞けないウラ話を聞いてもっと関心を深めてほしいとの思いから、ゲストに「劇場版からかい上手の高木さん」「アニメおじゃる丸」などを手掛けたアニメーション監督 赤城博昭さんを迎え「楽しくて深いアニメーションの世界へようこそ!」と題したトークセッションが行われました。
会場にはアニメファンや映画愛好家が集まり、熱気に包まれました。赤城監督がどのようにして作品に命を吹き込んでいるのか、その貴重な体験談が語られました。

赤城監督がアニメーションの世界へ進んだきっかけ


赤城監督は、雪深い福島県のご出身。年の離れた兄弟の影響で幼い頃からいろいろなジャンルのアニメやまんがを見ていたそうです。祖母に連れていってもらった「東映まんがまつり」の話題をはじめ、好きな作品として「太陽の王子ホルスの大冒険(1968年)」「アルプスの少女ハイジ(1974年)」「あしたのジョー(1968年)」などの名作を挙げ、

「昔に比べると表現の世界は難しくなってきた。過去の作品は自由度が高く、制限されていないところが面白くて楽しめることから、過去の作品を今もなお愛している」と語りました。

そんな赤城監督がアニメーションの世界に目覚めたのは中学生の時。キャラクターデザインで長く活躍する美樹本晴彦さんとの出会いがきっかけでした。
地元で開催されたイラストコンクールのイベントでサインをする美樹本さんが、約700人という大人数のファンらにイラスト付きでサインを書いていたことに驚いたそうです。さらに「目から描くのか…」と興味深く手元を見ながら、いつも画面で見ているキャラクターが目の前で描かれていくその姿に感動したと言います。


当時、絵が上手いわけではなかったという赤城監督でしたが、自身の絵が美樹本さんに認められ最優秀賞を獲得したこともあり、「ひょっとしたら・・・」と自信が湧いてきたことがアニメーションの世界へ進むきっかけとなったそうです。
 


見せびらかさないカッコよさをもつキャラクターを描きたい
 

特に憧れていたアニメのキャラクターとして「未来少年コナン(1978年)」や「ルパン三世カリオストロの城(1979年)」の主人公を挙げられていました。

「カッコつけてる人間が嫌いだった。未来少年コナンは、カッコつけていない。動きも面白いし一生懸命なところに笑いが起こる。その姿に憧れた。」赤城監督はキャラクターを表現する際のカッコよさについてこのような考えを明かしました。

また、テレビ放送28回、常に高視聴率を獲り続けているルパン三世カリオストロの城についても、
「本当に日本人が作ったのかなと思うほど、スケールが違うと感じた。ルパンは滑稽だが、地下牢に落とされるシーンでズボンに手を突っ込みニヤリとして落ちていく、あの余裕感がカッコいいんですよねー。」と語り、会場には共感の輪が広がっていました。

これらの作品の影響から、カッコよさというのは、見せびらかすのではなく、見えないところでカッコいいというのを描けたらいいなと思っていると話しました。
 

からかい上手の高木さん制作エピソード



話題は、香川県の小豆島を舞台に描かれた「劇場版からかい上手の高木さん」の制作の話へ。この作品は「聖地巡礼」をすごく意識して制作したそうです。

「旅にリアル感がほしいと思ったので空気感を大事にした。きれいな自然をただの人物の背景にしたくなかった。よりキャラクターに合った絵にしたかった。」

また原作に出てくる神社はどこがいいのだろうと神社巡りをしながら探していた際には、ずっと晴れていたのにその神社に着いた時だけ、原作と同じく雨が降ってきて「この神社に呼ばれたのかという不思議な感覚があった」と選定理由の裏話を明かしてくれました。
 

アニメーション驚きの基本工程と苦労


今回の映画ゼミナールでは、アニメ制作のプロセスについても実際に赤城監督が作った絵コンテや原画をスクリーンに映しながら解説してくれました。

あなたはアニメ制作の基本工程をご存知でしょうか?

企画や製作委員会の立ち上げにはじまり、シナリオづくりの後、ざっくりとした絵コンテを作成します。この日スクリーンで公開された絵コンテには秒数とともに、背景のひとつである電柱がどの方向に、どのくらいの幅で動いていくのかという細かい指示が書かれています。

さらにその次の工程であるレイアウトは、ベースの絵となるためカットの数だけきっちりと描かれていきます。そこから背景やCGの依頼、動きの元となる原画の作成、仕上げ、撮影、編集、アフレコなど、それぞれの担当者による気の遠くなるほどの工程を重ねていくことが分かりました。

今回特別に披露してくれた、たった2~3秒のシーンでもこれだけの枚数の絵を重ねていくのかと会場からは感嘆のため息が漏れ出ていました。
 


アニメ業界の未来
 

スタジオジブリの作品「紅の豚(1992年)」の制作に関わったときには、約2か月間ずっと飛行機の絵ばかり描いていたので、終わったら人間が描けなくなっちゃったと笑いながら当時の苦労やエピソードを話してくれました。

「どの作業も大変。楽しいと思わないと出来ない作業。せっかく描いてもらったのに後からそのシーンがカットされてしまうのは申し訳ない気持ちになる。ちょっとしたミスでもいろんな人の予定外の時間を使ってしまうため、なるべくミスは減らしたい。」
と、監督としての責任と制作に関わる膨大な数のすべての人への気遣いなどその苦労を語りました。

日本が誇る文化であるアニメ業界も近年では人材不足が深刻となっています。映画のエンドロールには、日本人以外のスタッフの名前が連なっているのを見ることが増えてきました。

セル画時代は手塗りだったものがデジタル化により作業が楽になったり、絵をデジタルで描いてデータで送れるようになったことから近年では、場所を選ばず、地方でも、在宅でも作業ができるようになり働き方改革が行われているようです。

またAIの活用等が増えてもやはり変わらないのは、何もない真っ白なところから作品を生み出していく楽しさとやりがい。

「アニメーションの魅力は絵が動くところ。その表現の楽しさ。アニメーションは関わるとより楽しくなる。特にアフレコは命が宿る瞬間。神聖で今も感動します。魅力あるフィルムづくりをしていきたいのでぜひアニメーションの世界へ入ってもらいたい」とアニメーターを目指す若者へメッセージを送りました。


今年度も2月に「さぬき映画祭2025」が開催されます。
「さぬき」にこだわり、県内で撮影された作品や県出身の監督・俳優が制作・出演している作品などを上映するだけでなく、関係者によるゲストトークなどがあるのも魅力です。
今回は、第7回シナリオコンクール大賞受賞作品である「潮待ち模様」を映画化した作品や、リクエスト募集で投票の多かった作品などの上映を予定しています。
あなたもぜひさぬき映画祭に参加して、一緒に映画の世界を楽しんみませんか?



さぬき映画祭のホームページはこちらから!!
 

 

 

 

 

【さぬき映画祭2025】上映会のプログラムを発表します!

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