知るともっと楽しくなる!香川県立ミュージアムで探る香川の歴史と文化の魅力
香川県立ミュージアムは、歴史博物館と美術館が一つになった総合的なミュージアム。はるか2万年前に遡り香川県の歴史を紹介する展示室や、香川県にゆかりのある作家の美術作品の特別企画展などを通じて、何度訪れても知的好奇心をそそられる場所です。
今回、香川県立ミュージアムで働く広報担当者さんや学芸員さんに館内を案内していただき、多くの見どころを教えていただきました。この記事内ではすべてを伝えきれないことがもどかしいほどです。その中でも今回は「空海展示室」を中心に紹介していきます。
日本でここだけ!空海の生涯を追う展示
日本の歴史や文化に大きな影響を与えた弘法大師空海は香川県出身。香川県立ミュージアムでは、空海に関する展示も非常に充実しています。
2階常設展示室3は、京都東寺の灌頂院(かんじょういん)をモデルにしつらえた厳かな空間で、中世に描かれた絵巻の流れに沿って空海の生涯が紹介されています。
この展示室の中で一番目を引くのは壁一面に広がる大きな曼荼羅(まんだら)。
こちらは実物を写真に撮って印刷しているのではなく、なんと現代の仏画師さんに描き起こしてもらったもの。
「絹地に顔料で、色をつけて、金箔を細く切って線のようにして貼り付けて模様をつけています。だから光の加減によっては金が反射してすごく美しい。印刷では絶対にこれは表現できない。よく目を凝らすと金の飾りが少し盛り上がっていたりするんですよ。」
この華やかな曼荼羅、どうりで目を引くわけかと納得しました。仏画師さんも制作する過程に「これ(復元作業)自体が修行です…」とおっしゃっていたのだとか。
「この曼荼羅はレプリカですが、複製品としての価値があります。」
実は京都にある本物の曼荼羅は、時間の経過により色褪せて見えるそうですが、こちらのレプリカは描かれた当時と同じ極彩色のイメージを見てとれます。ぜひあなたのその目で見ていただきたい迫力の展示です。
ちなみにこの貴重な曼荼羅の展示替えの際にはなんと大人4人がかりで慎重に丁寧な作業を行っているそうです。
実際に描いて再現された曼荼羅が展示されているのは日本でここだけ。この展示室に入るだけでも価値があると感じました。
空海と言えば三筆と称された書の名手。日本の書道史に大きな影響を与えました。空海の直筆はほとんどが国宝になっています。誰に見せるつもりもなく書いた、ちょっとしたメモまでもが国宝になっているということで、もし空海がその事実を知ったならきっと少し恥ずかしそうに驚くのではないかな、なんてことを想像しながらその書をじっくりと鑑賞しました。
ここでは、国の重要文化財など通常見ることの出来ない貴重な宝物を忠実にうつして作成した複製資料から空海の事績をたどることができます。
こちらの展示室を案内してくれた学芸員さんは、もともとは仏教美術の仏像がご専門。昨年空海をテーマにした特別展を担当したことで、空海のすごさを改めて実感したそうです。日本が豊かになってほしいという目的で、唐に渡り、最先端のものを学んで持ち帰った空海。
「空海の生涯を見ていただける展示は国内でここしかないので、それを考えたら、この館の役割としてもっと空海の魅力だとか、日本の歴史や文化に残した足跡をもっとみなさんに分かりやすく伝えていきたいし、知っていただきたい。」とおっしゃっていました。
展示の舞台裏と楽しみ方
いま香川県立ミュージアムには、県内・県外はもとより、海外からのお客様も増えています。
「お遍路で香川を訪れる方々は、弘法大師空海ゆかりの札所をまわられているので、空海という人物についてもっと深く知りたいという方も多いはず。こちらにも寄っていただけるような何か取組みができたらいいなと思っています。改めて魅力発信をしていくことがこれからの課題です。」と話されていました。
この時期はちょうど来年度どういう企画にするか具体化していく時期ということで毎日頭を悩ませているそうです。
「一生懸命つくりあげた展覧会をどういう風に広報していくか。自分たちができることで、SNS等を使って発信していきながら挑戦しているところなんです。」
香川県立ミュージアムが何度訪れても新しい発見がある場所であるのは、こうしたスタッフの皆さんの陰の努力によるもの。さまざまな展示を通じて、観光客のみならず、地元の方々も香川県の魅力を再発見できる要素が多くあります。
例えば3階の歴史展示室は、香川県の歴史と文化を時系列にたどることができます。原始時代から現代まで約2万年の香川の歴史について時代順にコーナーを展開し、わかりやすく紹介されていて、県の歩みを知ることができます。
古代から中世にかけての香川県は、交通の要衝であり、四国の他の地域とも密接な交流がありました。古代の土器や埴輪、中世の古文書のレプリカなどが展示されており、歴史好きにはたまらない展示内容です。
その中でも弥生時代の矢じりは校外学習等で訪れる小学生が必ず足を止める人気の展示なんだとか。歴史展示室担当の学芸員さんも特に戦国時代がお好きということで、「気になるポイントは人それぞれ。気になったものからゆっくりそれぞれのペースでみていただきたい。」とおっしゃっていました。
この歴史展示室には写真撮影OKの大きな再現ジオラマもあり、こうした大型の展示物や映像でそれぞれの時代の雰囲気を実感しやすくなっています。なんと32万点もの資料の中から熟考して、3か月に1度展示を入れ替えているのだとか。
こうした展示を通じて、香川県の歴史を深く理解することができ、日常生活では感じることのできない時の流れに触れることができました。
ほかにも、「香川県立ミュージアムのすぐ隣には史跡高松城跡玉藻公園があります。香川県立ミュージアムで高松松平家の歴史資料を見た後に、実際にその地、高松城跡地の玉藻公園を散策する、という楽しみ方もできますよ。」とおすすめしていただきました。
知るともっと楽しくなる。歴史も美術作品も、知ることで鑑賞の視点がより広がっていきます。
常設展示は1時間程度あれば十分お楽しみいただけます。ふらっと立ち寄っても存分に楽しめる空間。65歳以上の方や高校生以下の方は観覧無料です。あなたもぜひ立ち寄ってみてください。
【香川県立ミュージアム】美術を探求 ギモンにせまる