COLUMN コラム

コラム Vol.3

これ知ってる?誰でもできる石積みアート「ロック・バランシング」

小さいトライ&エラーを何回も繰り返す。そこが面白いところ。

今年6月に高松市で開催された庵治石のイベント「あじストーンフェア2024」の会場で気になるブースを発見しました。それが、石積みアート「ロック・バランシング」。
必要なものは石だけ。石が絶妙なバランスで積み上げられています。驚くことに、接着剤などは使われていません。
ロック・バランシングは、アート作品として、また手軽な遊びとして世界中で幅広く親しまれているようです。

会場の体験ワークショップでは、子どもたちだけではなく、大人も挑戦する様子がたくさん見られました。
講師を務めるのは山梨県出身のアーティスト石花ちとく先生。彼に会うためにはるばる県外から来場された女性たちの姿もありました。そんな先生にお話を伺いながら早速お手本を作ってみせていただきました。

積むのではなく、立てる。

「石を立てる」。そう言われても、立てるとは一体どういうことなのか?いまいちよく分からないのが本音。その気持ちを率直にぶつけると、「見ているだけでは分からないはず。石を触って、やってみなければ分かりっこない。」だから体験ワークショップを全国各地で実施しているのだそうです。

まずは石選びから。お気に入りの石を探していきます。重さを感じて、手触りを楽しみ、よく眺めてその石の一番かっこいい向きを見つけます。
おすすめの石は?と聞くと、「おすすめは無い。自分で選ぶ。他人に言われた石では頑張れないから」。いいな、と感じたらとにかく手に取ってみる。人それぞれ、コレ!と思う石は違います。その石を手にした瞬間から、アートは始まります。

お気に入りの石を手にしたら、いよいよ立てていきます。石の表面のくぼみなどを利用し、小さな接点で積み上げるオブジェ。小さな石の上に、大きな石を立てるのはなんだか難しそう。というか、もはや不可能にも思えてきてなんだか不安が募ります。
自分で選んだ石を組み合わせてバランスを探っていきます。真剣な表情。だんだんと集中力が研ぎ澄まされていきます。
3~5分。やっているうちに、当たり具合やこすれ具合が指に伝わってきます。それを手掛かりにちょっとずつ動かしていく。小さいトライ&エラーを何回も繰り返す。そこが面白いところなんだとか。

立ちそうで、立たない…。石同士の接点を少なくしながら積み上げるため、どうしても不安定になります。祈るような気持ちで先生の手つきを見ていました。
しかし見られていると、気負いがでてしまい、指先に伝わってしまうそう。気負いという魔物が大敵に。(先生お邪魔してごめんなさい)
「これ無理かも…と諦めることもあるんですか?」との質問に対し、「最大のコツは出来るって思うこと。無理かもって思った途端にダメになっちゃう。」そう教えてくれました。
メンタルを維持するのがちょっぴり大変なので時間のある時に挑戦するのが良さそう。あんまり時間に急いていると無理かもと思ってしまう。これはマイナス材料で、迷いが出てしまうのだとか。

やってみた人だけがわかる快感。その場限りのアート。

お話をしながら数分の後、ついに、その瞬間が訪れました。
そっと手を離すと、絶妙なバランスで、石の動きが止まりました。「あっ、立った!!」この達成感、本当に嬉しい。先生と思わず顔を見合わせる瞬間でした。
 
「立ったときは嬉しい。我々の言葉で言うとその瞬間、脳汁が出るんです。それでハマるんです。」
 
やってみた人だけがわかる快感。完成したら記念写真を撮ります。そして、崩して帰るのがルール。なんだかもったいない気もしますが、それがアート。

先生はこのアート活動をはじめて12年。一回バラしてしまうと、二度と同じものはできない。少しの揺れでも崩れるのが制作の難しさであり、魅力でもある。
鏡餅みたいに重ねても全然面白くない。小さい石の上に、大きい石を立てる。この瞬間の喜びはひとしお。とにかく根気がいる作業。
「積むのではない、立てるんだ。」ブルース・リーの映画で言っていた「考えるな、感じるんだ」をもじって、理屈ではなく感覚を重視することの大切さを語ってくれました。

自然の石に触れる

海や川で、誰でもできる素朴なアート活動。一瞬の芸術にあなたも挑戦してみてはいかがでしょうか?お気に入りの石を探す中で、感性も磨かれるはず。自然の石に触れることで、心が癒されます。
これまでにいろんな石を触ってきた石花ちとく先生。今回ワークショップで使用した香川県の名産「庵治石」については「きれいだな」という印象を持たれたそうです。

そんな庵治石を使った石灯篭のオブジェ作品が街に並ぶ「むれ源平石あかりロード」が今年も開催されます。期間は8月24日(土)~9月7日(土)の15日間。
今年は石あかりロード20周年の記念開催。新企画のひとつ、竹ランプシェードとのコラボや、地元小学生とのコラボも企画されているそうです。
香川県が世界に誇る銘石・庵治石のアート作品を見て、庵治石の魅力を探しに、この夏、高松市牟礼町を訪れてみてはいかがでしょうか。